■第11回(2009.3)■
「A−YOGA」
〜 トップアスリートとの交流の中で生まれたYOGA 〜
◇PART1◇
感じることで、人は強くなれる!もう、悲しい思いはしなくていい!
日本(人)が開発したプログラムをご紹介する「ジャパニーズフィットネス」第11回は、数多くのトップ・アスリートとの交流の中で生まれた「A−YOGA」をご紹介。その考案者、NATA公認アスレティックトレーナーであり、フィットネス事業アドバイザー、A−YOGA指導者育成などでご活躍中の山本邦子さんにお話を伺いました。
A−YOGAとは
G(編集G):まず、A−YOGAの「A」とはどんな意味なのか教えていただけますか?
Y(山本邦子さん):A−YOGAの「A」には、 Awareness (気づき)・ Awakening (覚醒)・ Anti-Aging (アンチエイジング・抗加齢)・ Athletic (運動)の4つの意味があり、これは、A―YOGAを実践していくことで得られる効果を表しています。自分自身の今の身体の状態に気づき、自分の身体が持つ潜在能力が目覚め、気持ちが前向きになり細胞も活性化し、ケガや病気になりにくい身体になって行くということです。
G:山本さんの著書「アスリート新化論」の中でも伝えられている、「感じる力=感覚力」がA−YOGAの実践を通じて鍛えられ、その人が本来持っている実力が発揮できるようになるということですね。元々、アスレティックトレーナーの山本さんが、YOGAに目を向けたのはどんなきっかけだったのでしょうか?
YOGAとの出会い
Y:アスレティックトレーナーとして WNBA ( 全米女子バスケットボール )の選手を担当していた当時、YOGAがアメリカで流行りはじめていて、「邦子は東洋人だからできるはず」とよくわからない理由で誘われ(笑)、ビクラムヨガを受けに行ったのが初めの体験でした。
G:初めてのYOGAはいかがでしたか?
Y:もう、とにかくきつかったですね!でも、不思議な爽快感があって・・・。
G:わかります!エアロビクスや筋トレとはまた違う、爽快感なんですよね。
Y:ええ。西洋式のトレーニングとはまったく異なる感覚があったので、取り入れたらまずは楽しめるのではないかと思い、私なりにYOGAのアーサナ(ポーズ)を分解してエクササイズとして導入しました。特に、選手がケガから復帰するまでのリハビリエクササイズは、淡々と行うものが多く飽きてしまうので、よい動機付けになりました。
G:最初はエクササイズの1つとして、導入をされたんですね。反応はいかがでしたか?
Y:反応はとても良くて、YOGAというイメージもうまく作用してくれたように思います。遠征先で眠れなくなる選手などにもリラックスできるものを選んで行ってもらったのですが、効果はテキメンでした。この時から、少しずつYogaを学びながら、トレーナーの仕事にも活かしていくようになりました。
A−YOGAが生まれるまで
G:そこから、A−YOGAという1つの体系としてまとめていくことになったきっかけはありますか?
Y:日本に帰国し、2003年から劇団四季でアスレティックトレーナーを務めさせて頂いたのですが、その時に、集団指導をする必要が出てきました。今までは、ほとんど1対 1 に近い形での指導が多かったので、どんなものが一番効果的で、キャストの皆さんにも楽しんで続けてもらえるか・・・と考えたときに、YOGAがいいかも知れないと思いました。いざ公演がはじまれば、毎日が本番で緊張の連続ですので、キャストの皆さんは心も身体も休まる暇がありません。だからこそ、自分で自分の心身を整えていけるものを伝えて、実践できるようにする必要があったんです。
G:なるほど。それが、A−YOGAが出来るきっかけとなったのですね。アスレティックトレーナーとしての2年半はいかがでしたか?
Y:アドバイザー(健康管理)業務に限らずトレーナーは、常に「結果を出すこと」が求められますので、その人が置かれている状況、舞台として求められている状態、その人の心身の状態などを瞬時に総合的に把握して、最良の結果を出すために微妙な調整をしたりと、せめぎあいの日々です。ですから、集団指導においても昨日とまったく同じレッスンを行うことなんかありえないですし、プランは一応考えて行いますが、その日の参加者、全体の様子に合わせて臨機応変に対応し、結果を出すことを考えて行う毎日でした。
日米におけるトレーナーの意味
G:結果を出すことが求められるのは、日本のトレーナーでも同じなのだと思いますが、日本とアメリカではトレーナーという職業イメージにかなり違いを感じます。その点はどう思われますか?
Y:アメリカでは、州によって多少異なりますが、アスレティックトレーナーは法律によって保護されています。ですので、それなりの権限と、責任が伴っているわけです。チーム所属のトレーナーとして付いているときは、24時間常に選手のことを考えているような状態ですし、選手も私達トレーナーを信頼してくれ、時には監督やチームメイトに言えないことまでも打ち明けてきたりします。
G:ほとんどお母さんに近い存在というか、フィジカルなことだけではないんですね。
Y:とくに学生は、精神面がまだもろい傾向にありますので、そこも考慮しながら各選手がベストなコンディションで試合に望めるようにメニューを組んだり、休みをいれたりとしていきました。
G:日本でも同じようにアスレティックトレーナーという地位が確立されているのでしょうか?
Y:私の印象では、まず、「トレーナー」というものの定義が定まっていないように感じます。マッサージをするのか、トレーニングを処方するのか、ストレッチなのか・・・、手技手法が分かれすぎているのではないでしょうか?流派(?)などを超えて、トレーナーの地盤固めをしていくことが大切なように思います。
G:確かにトレーナーといっても、日本では人によって持っているイメージが異なりますね。山本さんは大学でアスレティックトレーナーとして活躍されていましたが、アメリカでは大学自体が「スポーツ」をとても重んじていると伺いましたが。
Y:アメリカの大学では奨学金制度で入ってくる選手が多く、彼らは単位を1つでも落とすと試合に出られなくなってしまうので、本当に寝る間もないくらい勉強と練習の日々を送っています。大変厳しいものだと思いますが、大学側は、この選手が大学を卒業し、どれだけ社会に貢献できる人物になるかを考えているんです。心も能力も磨かれた選手を輩出することが大学のプライドでもありますので。
G:なるほど。すばらしい選手を輩出する責任とプライドがあるんですね。でも、選手にとっても、厳しいけれども結果として、プロに転向するにも、一般企業に就職するにも、大学での経験が大きく活かされ、一生の宝物になるのではないでしょうか。
Y:そうですね。人間として大きく成長できる期間になるのだと思います。
次回は、インストラクターへのアドバイス、指導ポリシー、A−YOGA養成コースについてなどお聞きします。
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